見出し画像

決死の覚悟でのぞんだnoteのドメイン移行。検索流入急落からの復活劇

リスクはある。成功するとは限らない。それでも挑戦しなければならなかったことがあります。それが、2019年11月25日、noteのサービスURLの「note.mu」から「note.com」へのドメイン変更

わたしたちが「note.com」ドメインを取得したのが、2018年12月。さらにさかのぼると、CXOの深津さんが就任した2017年10月からサービス改善における最重要項目のひとつとして位置づけられていました。

2年もの歳月をかけて取り組んだ「note.com」へのドメイン移行。今回の #ピ社のひとびと では、CEOの加藤さん、CTOの今(こん)さん、そして深津さんにドメイン移行とともに歩んだ2年間を振り返ってもらいます。

リスクはあった。でも「やらない」という選択肢はなかった

加藤:まず、なぜ「note.com」へドメインを移行することになったのか。いろいろなメディアの記事やnoteでも紹介していますが、あらためて触れておきましょうか。

深津:noteがメディアプラットフォームとしての覇権を握るためには、なんとしてもメジャードメインである「.com」を取得する必要があったということですね。これは理屈ではなく、「帝王学」のようなもの。これからグローバルを目指していくうえで、「.com」の取得は大きな布石だと考えました。これが「攻めの理由」です。

:ドメインは、プラットフォームとしての姿勢そのものだと思います。noteには「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」という明確なミッションがある。「.mu」と「.com」だったら、後者のほうが安心感はありますからね。

画像1

加藤:「守りの理由」もお願いします。

深津:noteのSEO強化です。noteはもともとSNSからの流入が多い。ぼくがはいってから検索からの流入は2倍ちかくに伸びたけど、それでももっと伸ばせる余地がある。そのための手段のひとつがドメインだと考えました。

以前の「note.mu」はちょっと特殊で、アフリカのモーリシャスに属するドメインなんです。専門家に話を聞いたところ、「.mu」ではSEO的に不利だと言われました。SEOに有効とされる「.com」や「.jp」といったメジャードメインへ移行することを決めました。

加藤:当然、リスクもありましたよね。

深津:なんといっても月間2000万人のひとが利用しているサービスですからね。うまくいかなかったときのダメージは大きすぎる。ただ、ピースオブケイクにはやるべきことを後回しにしないカルチャーがあります。「やるならいましかない」と判断しました。

:もう少し細かい話をすると、移行後に一時的に流入が落ち込んだり、メンテナンスが発生したり……いろいろなリスクは想定されましたが、どれも短期的なものばかり。長期的に考えればやるべきだ、と。

一時的に検索順位が下がることを覚悟していた

画像2

加藤:では、移行のときのエピソードも聞かせてください。

:移行前日の2019年11月24日ですね。ぼくがひとりで会社に張りついて対応していました。他のエンジニアはリモートでつなぎながら。

深津:そうそう。ぼくが夜中に差し入れしようとエナジードリンクを10本ぐらい持ってきたら、今さんひとりしかいなくて(笑)。

加藤:実際のところ、意外とすんなりできたイメージだったんだけど、実際はどうでした?

:そうですね。当初組んでいたスケジュールどおりにできましたね。まぁ、準備にそれまでの半年ぐらいを費やして、社内環境ではずっと.comで見てきました。

加藤:準備というと、具体的には?

:主にアプリケーションとネットワークの改修です。

ネットワーク周りはぼくが担当したんですが、大変だったのはアプリケーション改修を担当したエンジニアだったと思います。コードにnote.muを前提にしている文字列やロジックがいっぱい埋め込まれているんですよね。開発当初はまさかドメインが移行するとは想像していないので。だから、たくさん埋め込まれたnote.muを探して、仮に今後また移行があってもいじれるようにキレイに書き直しました。移行を円滑にすすめるため、note.comとnote.muのどちらも処理できるように考慮する実装も加えました。

加藤:SEOの観点だとどうでしょう?ドメインを移行すると検索順位が下がるリスクがあると言われていますよね……。

深津:専門家の意見も割れたんですよね。移行推進派と現状維持派で。当時noteには約600万件の記事があって、CGMのメディアというかなり特殊な存在なので、前例もなかったんでしょうね。

加藤:そうなんですよね。というのは、自分たちだけで運営しているサイトのドメインを移行して、それで検索順位が下がったとしても、まあ自己責任じゃないですか。でも、noteはたくさんのクリエイターのみなさんのコンテンツを預かっているので、検索順位を下げてしまうのは本当にまずいわけで。そのあたりはどうやって解決していったんですか?

深津:一度検索順位が下がることは、ほぼ間違いないだろうと考えました。ただ、下がったとしても半年後ぐらいには不死鳥のように返り咲いて、その後突き抜けるだろうという目論見でしたね。なんなら半年もかからないだろう、と。

トラフィックが以前の4割になった瞬間が……!

画像3

加藤:はい。それで、実際に移行した直後はどうだったのかというと…。

深津:最初の1ヶ月は地獄でしたね。特に移行から2週間で、.muのトラフィックはゼロになりました。「じゃあ.comが増えているかな」と思ってみたら、以前のトラフィックの4割ぐらいにしかなっていない。

:リダイレクトの対応もきっちりやっておいたので少なくとも7割ぐらいで抑えられると思っていたんですけど、まさかの4割。「いろいろ言われているけど、実際はあまり減らないんじゃないか」という希望的観測もあったんですが、ガッツリ下がりましたね(笑)。

深津:本当に「このまま復活しなかったらどうしよう……」と、12月はずっとお腹が痛かったですね。

加藤:潮目が変わってきたのはいつぐらいでしたか?

深津:1月の頭ぐらいです。

画像4

加藤:意外と早いですよね(笑)。

:そうですね(笑)。1月の頭ぐらいに徐々にトラフィックが戻ってきて、すぐに移行前の数値を超えました。

画像9

加藤:これ、本当にすばらしいグラフですよね。

:おかげさまで(笑)。その後も当初の目論見どおり、勢いは落ちることなく伸び続け、なんと約2ヶ月で2.3倍になりました。日に日にトラフィックが伸びていく様子を見届けるのは、本当に幸せでしたね。自分たちの仮説、そしてやり方が間違っていなかった、と。

加藤:感慨深いものがありました。

深津:さらに……。

加藤:さらに?

深津:最近はGoogleアプリの新機能であるGoogle Discover(パーソナルデータをもとに興味関心のあるウェブコンテンツを検索せずとも表示するサービス)に採用されるnoteの記事が多く、そこからの流入も増えてきています。

加藤:宣言していいですか?……「大!成!功!」ですね。

画像6

深津:1月にはGoogleのコアアルゴリズムアップデートもあったそうですが、おそらく、それすら追い風になりました。年末年始をはさんだことで、noteに投稿するひとも増えているタイミングだったので……結果としては、11月から実施したことは大英断でしたね。ホント、こればかりはやってみないとわからないので心臓にはよくないですが(笑)。

加藤:今さんにとって成功の要因があるとしたらなんですか?

:そうですね……AWSのネットワークのソリューションが充実していたのは、かなり助かりました。最悪、自分でプロキシサーバを立てる可能性があったことを想像すると、ちょっと腰が重くなっていたかもしれませんね。

noteは、ドメイン移行でさらに加速する

画像7

加藤:じゃあ、このドメイン移行を振り返って感じたことを教えてください。

深津:多少時間がかかって、noteのグロースとの関係性は周囲から見えづらかったですが、妥協せずにやりきれたのは会社のアティテュードとしてすごく意味があると思います。今後会社が大変なことに直面しても逃げずに戦って、乗り越えていくときの支えになるんじゃないでしょうか。こういうところを緩めると「俺が定年退職してから次の世代でやってくれ」という考え方になりがちなので。

加藤:AppleがApple Storeをつくった話に通じるかもしれませんね。小売店で販売してもらったほうがラクなのに、あえて自分たちで売ることを決めた大きな決断です。今回のドメイン移行もnoteにとってはかなり大きな出来事になりそうですね。noteのユーザーからの反応はどうでしょう?

:反対意見があるかと思っていたけど、特になかったし、移行後はTwitterでシェアしているURLをみて「圧倒的メジャー感!」と満足されている様子のコメントを見かけました。.comに移行してからnoteを始めたユーザーもいたので、おおむね好評なのではないでしょうか。

深津:個人的には、株主のみなさんがドメイン移行を快諾してくれたのはありがたかったですね。

加藤:そうですね。ドメインの取得もけっこうなお金がかかってますし、移行にも大きなコストがかかります。でも、長期視点で考えれば、今まで広告費を一切使ってこなかったnoteにとって、ドメイン移行はお値打ちなプロモーションのようなものだ、と説明したんですが、すんなりご理解いただけました。それは本当によかったです。

画像8

深津:流入経路も、ダイレクトとソーシャル、SEOのバランスがそれぞれ30%前後で理想的なパーセンテージですし。結論、「noteはまだまだ伸びる」でよろしいでしょうか?

加藤:そうですね。冒頭にも触れましたが、今回のドメイン移行もグローバルを狙うための布石なので。まだまだnoteは伸びます!やるべき意思決定を先延ばしにしてはいけませんよね。これからもリスクをおそれずに、積極的にチャレンジを続けていくことでnoteを世界へ打ち出していきたいと思います。というわけで、みなさんお疲れさまでした!

採用バナー

Text by 田中嘉人、Photo by 森本愛
やった!また見にきてくださいね!
627
“だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。“をミッションに、表現と創作の仕組みづくりをしています。note(ノート)では、クリエイターが各自のコンテンツを発表してファンと交流することを支援しています。cakes(ケイクス)は、cakes発のベストセラーを多数輩出しています。